「派遣会社を選ぶ際、何を確認すれば法的リスクを避けられるのか」——上場企業・大企業の総務部門や経理部門からこの相談が増えています。2025年に入って派遣業界の倒産が急増し、選定段階でのコンプライアンス確認の重要性がかつてなく高まっているためです。
本記事は、経理派遣の会社選定を大企業向けに体系化した7項目のチェックリストです。労働者派遣事業許可・情報セキュリティ認証・財務健全性・同一労働同一賃金対応など、上場企業の調達・法務部門が必ず確認する項目を、担当者がそのまま使えるチェックシート形式で整理しました。
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大企業が経理派遣会社のコンプライアンスを重視する理由
経理業務の機密性——未公開決算情報・M&A情報を扱う特殊な環境
経理派遣が他の職種派遣と決定的に異なるのは、未公開決算数値・M&A情報・内部統制ドキュメントなどインサイダー情報相当のデータを日常的に扱う点です。派遣会社のコンプライアンス体制が不十分な場合、情報漏洩リスクが事業リスクに直結します。選定段階で「誰が・どのように・どこまで情報を扱えるか」を制度として担保できる会社を選ぶことが、上場企業の鉄則です。
経理派遣の全体像は経理派遣 完全ガイド|上場・大企業の活用法と選び方、依頼フロー全体の位置づけは経理派遣の依頼フロー|大企業の要件定義〜着任まで全工程をご参照ください。
派遣会社のコンプライアンス違反が派遣先に及ぼすリスク(事業停止・業務中断)
派遣会社の許可取消・行政処分・倒産が発生すると、派遣先企業も連鎖的に以下のリスクを負います。
- 派遣スタッフの給与未払いによる就業停止と業務中断
- 秘密保持契約の履行不確実性(情報管理体制の崩壊)
- 代替スタッフ確保の緊急対応コスト増大
- 社会的信用への波及(派遣会社選定の適切性への疑義)
特に決算期・四半期決算業務を担う経理派遣では、途中停止が決算開示の遅延につながるため、派遣会社選定の影響は経理以外の部門にも及びます。
2025〜2026年の派遣業界動向——倒産件数増加と財務健全性確認の重要性
東京商工リサーチの発表によれば、2025年1〜5月の労働者派遣業倒産は53件に達し、1997年以降の同期間では最多ペースとなりました。人件費高騰と派遣料金への転嫁困難が主因です。上場企業の経理部門は長期契約が多く、派遣会社の突然の倒産は深刻な業務中断を招きます。この時流のなかで、選定段階での財務健全性確認は必須の手続きとなっています。
チェック項目①——労働者派遣事業許可の確認
許可証番号の確認方法(厚労省・都道府県労働局の検索手順)
派遣会社の労働者派遣事業許可は、許可番号を厚生労働省の「人材サービス総合サイト」または都道府県労働局の公表一覧で検索して有効性を確認します。許可番号は「派◯◯-◯◯◯◯◯◯」の形式で、会社のWebサイトや提案資料に記載されています。検索結果に該当がない、もしくは許可取消の履歴がある場合は選定対象から外すべきです。
一般労働者派遣事業 vs 特定労働者派遣事業(廃止)の違い
2015年の派遣法改正により、旧来の「特定労働者派遣事業」(届出制)は廃止され、現在は「労働者派遣事業」(許可制)に一本化されています。古い会社資料に「特定派遣」の記載がある場合は、許可制への移行が完了しているかを必ず確認してください。
許可の有効期限と更新状況の確認
労働者派遣事業許可は初回3年、更新後5年ごとに更新審査があります。更新時期が近い場合、選定検討期間中に許可が切れるリスクもあるため、許可証の有効期限を書面で確認します。許可更新は財務状況・教育訓練・情報管理体制の審査を伴うため、更新できない会社は何らかの問題を抱えている可能性があります。
経理特化型派遣会社と総合型の許可範囲の違い
労働者派遣事業許可自体は業種を問わず1つですが、派遣会社によって得意領域や登録スタッフの属性は大きく異なります。経理特化型は上場企業への派遣実績が豊富で、連結決算・IFRS・開示対応の経験者を多く抱える傾向があります。
チェック項目②——情報セキュリティ認証(ISMS・Pマーク)の確認
ISMS(ISO27001)の意味と経理派遣での重要性
ISMS(Information Security Management System、ISO/IEC 27001)は組織的な情報セキュリティマネジメントの国際規格です。派遣会社がISMS認証を保有していれば、スタッフへの情報管理教育・情報漏洩時の対応手順・アクセス権管理などが体系的に運用されていることが認証によって保証されます。上場企業の経理業務では、インサイダー情報の取扱いを前提とするため、ISMS認証の有無が選定の重要基準となります。
Pマーク(プライバシーマーク)の適用範囲——個人情報管理の観点
Pマークは個人情報保護に特化した認証で、ISMSよりも適用範囲が狭くなります。派遣会社の場合、登録スタッフの個人情報管理という観点では重要ですが、派遣先企業が扱う情報資産(財務データ・機密情報)の管理観点ではISMSの方が適合性が高いと言えます。
ISMS vs Pマーク——大企業の経理業務ではどちらが適切か
上場企業の経理派遣では、ISMS認証保有会社を優先するのが標準です。Pマークのみの会社の場合、追加で情報資産管理体制の書面確認が必要となります。両方保有している会社は、情報管理の総合力が高いと判断できます。
認証未取得の場合の代替確認事項(社内規程・情報管理体制の書面確認)
経理特化型の中小規模派遣会社ではISMS・Pマーク未取得のケースもあります。その場合は以下4点を代替確認項目として書面で確認します。
- 情報管理規程・セキュリティポリシーの写し
- スタッフへの情報セキュリティ教育の実施体制と実績
- 情報漏洩発生時の対応手順書
- 秘密保持誓約書・情報管理誓約書の書式
書面での体制確認ができない会社は、大企業のセキュリティ審査を通過できないと判断されます。
チェック項目③——財務健全性・経営安定性の確認
優良派遣事業者認定制度の基準——当期純利益・当座比率の確認
厚生労働省の「優良派遣事業者認定制度」は、派遣会社の財務健全性・スタッフ研修体制・情報管理・法令遵守体制を総合審査して認定する仕組みです。財務基準は「直近3年間の事業年度で当期純利益が連続赤字となる年度がない」または「申請時の当座比率が100%以上」が目安となっています。
設立年数・従業員数・経理特化型の登録スタッフ数確認
財務数値の定量確認と合わせて、会社の実態も確認します。設立10年以上で安定稼働している会社、経理特化型ならば登録スタッフ数が経理業務で数百〜数千名規模の会社は、継続性に一定の安心感があります。逆に設立間もない小規模会社は、経営安定性の観点で留意が必要です。
帝国データバンク・東京商工リサーチでの与信調査の実施
上場企業の新規ベンダー登録では、帝国データバンク・東京商工リサーチでの与信調査が標準手続きとなっています。派遣会社の評点・与信ランクを確認し、大手取引先としての適格性を判定します。既存取引先であっても、毎年の再与信で経営変化を捕捉することが推奨されます。
派遣会社倒産時のリスク対応——業務継続計画(BCP)の確認
万一の倒産リスクに備え、派遣会社が業務継続計画(BCP)を整備しているかを確認します。スタッフの給与遅延が発生した場合の連絡体制、情報資産の引き揚げ手順、代替派遣会社への引き継ぎ方針などが文書化されていれば、リスクは大幅に軽減されます。
チェック項目④——同一労働同一賃金・派遣法対応の確認
派遣先均等・均衡方式 vs 労使協定方式——大企業の派遣先企業が確認すべきこと
2020年施行の派遣法改正で、派遣スタッフの待遇決定方式は「派遣先均等・均衡方式」または「労使協定方式」のいずれかを選ぶことが派遣会社に義務づけられました。実務上は約88%の派遣会社が労使協定方式を採用しているとされます。
派遣先均等・均衡方式の場合、派遣先企業は比較対象労働者の選定・待遇情報の提供義務を負います。労使協定方式の場合は、派遣先企業の負担は教育訓練機会・福利厚生施設の均等提供に限定されます。選定時には、派遣会社がどちらの方式を採用しているかを必ず確認してください。
労使協定方式採用時の派遣先義務——待遇情報提供・比較対象者選定
労使協定方式でも、派遣先は以下の義務を負います。
- 教育訓練の機会の均等提供(OJT・研修機会)
- 給食施設・休憩室・更衣室等の福利厚生施設の利用機会の均等提供
これらは法定義務のため、派遣受入れ前に経理部門・情シス部門と調整して運用体制を整えてください。抵触日・同一賃金の詳細運用は大企業向け派遣法の抵触日・同一労働同一賃金 実務対応で解説しています。
同一労働同一賃金に未対応の派遣会社を選ぶリスク(行政指導・是正勧告)
派遣会社が2つの方式のいずれも採用していない、あるいは書面対応が不十分な場合、行政指導・是正勧告の対象となります。派遣先企業にも波及する問題のため、契約書の段階で採用方式が明記されていることを確認します。
教育訓練・福利厚生の均等提供確認——派遣会社が提供する研修内容
派遣会社がスタッフに提供する研修内容(簿記・IFRS・会計ソフト研修等)を確認することで、コンプライアンス体制の厚みが判断できます。研修体制が整っている会社は優良派遣事業者認定の取得にも近い傾向があります。
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チェック項目⑤〜⑦——契約スキーム・秘密保持・対応実績
⑤契約スキームの適法性——偽装請負リスクの排除(派遣と業務委託の混同防止)
派遣と業務委託(請負)は法的性質が全く異なります。指揮命令権が発注元(派遣先)にある場合は派遣、受注側(委託先)にある場合は業務委託となります。契約書類上は業務委託なのに実態は派遣指示を行う「偽装請負」は違法で、派遣先企業にも責任が及びます。選定段階で、契約書の類型と実態が一致しているかを法務部門と確認してください。
⑥秘密保持・情報管理体制——誓約書の書式・運用手順の確認
派遣会社が締結する秘密保持契約の書式と運用を確認します。派遣会社との基本契約の機密条項、スタッフ本人との個別NDA、インサイダー取引防止教育の実施記録、情報漏洩時の通知・対応フローを確認することで、情報管理の運用レベルが判断できます。受入れ時の具体的な対応は経理派遣 受入れ準備チェックリスト|上場企業のセキュリティ・IT設定で整理しています。
⑦経理・財務特化の派遣実績——上場企業への派遣実績数・スタッフの経歴確認
最後の1項目は経理特化の派遣実績です。上場企業への派遣実績数、連結決算・IFRS・開示対応の支援経験、スタッフの公認会計士・日商簿記1級保有比率などを確認します。実績が豊富な会社は、要件定義〜候補者提案のスピードと精度が全く異なります。連結対応の派遣活用例は連結決算 派遣|上場企業が即戦力を確保する方法と時給相場をご参照ください。
チェックリスト総括——7項目を1枚に整理した選定チェックシート
| # | 確認項目 | 確認方法 | 合格基準 |
|---|---|---|---|
| 1 | 労働者派遣事業許可 | 厚労省サイトで許可番号検索 | 有効かつ更新履歴あり |
| 2 | ISMS/Pマーク認証 | 認証書の確認 | ISMSまたはPマーク取得 |
| 3 | 財務健全性 | 与信調査・認定制度確認 | 優良派遣事業者認定あり |
| 4 | 同一労働同一賃金対応 | 採用方式の書面確認 | 2方式いずれかを適切に採用 |
| 5 | 契約スキーム適法性 | 契約書類の法務レビュー | 偽装請負リスクなし |
| 6 | 秘密保持・情報管理 | 書式・運用手順の確認 | 二重NDA・教育体制あり |
| 7 | 経理派遣実績 | 実績数・スタッフ経歴の確認 | 上場企業実績豊富 |
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よくある質問
経理派遣会社を選定する際に、コンプライアンス面で最初に確認すべきことは何ですか?
労働者派遣事業許可証の有効性(厚労省の人材サービス総合サイトで確認可能)と、情報セキュリティ認証(ISMS/ISO27001またはPマーク)の取得状況です。上場企業の経理業務では未公開情報を扱うため、この2点が最低ラインとなります。
中小規模の経理特化型派遣会社はISMSを取得していないことが多いですが、代替確認手段はありますか?
ISMS未取得の場合は①情報管理規程・セキュリティポリシー、②スタッフへの情報セキュリティ教育の実施有無、③情報漏洩発生時の対応手順書、④秘密保持誓約書の書式の4点を代替チェックとして書面で確認することを推奨します。
同一労働同一賃金(労使協定方式)を採用している派遣会社を選ぶ場合、派遣先企業に義務はありますか?
労使協定方式でも派遣先企業は①教育訓練の機会の均等提供、②給食施設・休憩室・更衣室等の福利厚生施設の利用機会の均等提供が義務として残ります。
優良派遣事業者認定を受けている会社とそうでない会社では、どのような違いがありますか?
優良派遣事業者は厚労省認定の審査基準(財務健全性・スタッフ研修・情報管理・法令遵守体制)を満たした会社です。認定会社はコンプライアンス違反リスクが低く、突然の事業停止リスクも抑えられます。
経理派遣会社が倒産した場合、派遣先企業はどのようなリスクがありますか?
主なリスクは①派遣スタッフの給与未払いによる就業停止、②秘密保持契約の履行不確実性、③代替スタッフ確保の緊急対応コスト増大の3点です。選定時に優良派遣事業者認定や財務情報を確認し、代替調達先を複数確保しておくことが対策となります。
まとめ
経理派遣会社の選定は、労働者派遣事業許可・情報セキュリティ認証・財務健全性・同一労働同一賃金対応・契約スキーム・秘密保持・経理派遣実績の7項目チェックリストで整理できます。2025年以降は派遣業界の倒産が急増しており、選定段階での財務健全性確認の重要性が高まっています。書面ベースで確実に検証することが、上場企業の経理派遣成功の第一歩です。