経理の人件費とBPO外注費を徹底比較【損益分岐シミュレーション付き】

経理担当者1名の年間総コスト480〜700万円に対し、BPO外注は年36〜120万円。件数別の損益分岐シミュレーションで「採用 vs 外注」の判断基準を数値で示します。

「経理担当者を採用するべきか、BPOに外注するべきか」。このテーマは中小企業の経営者が一度は直面する問いです。しかし判断の材料となるコスト比較が表面的な年収の数字だけで行われているケースが少なくありません。

実際には、経理担当者1名を雇用するコストは額面年収の1.3〜1.8倍に膨らみます。この記事では、採用にかかる「見えないコスト」を可視化したうえで、BPO外注との損益分岐点を件数ベースでシミュレーションします。

年間480〜700万円
経理担当者1名の総コスト(給与+社保+賞与+福利厚生+採用費按分)
doda 平均年収ランキング2025、マネーフォワード社会保険料計算ガイドより算出

経理担当者1名の年間コストを正確に把握する

経理担当者の採用コストを検討する際、多くの企業が見落とすのは「額面年収以外の費用」です。ここでは、doda「平均年収ランキング2025」の経理・財務職の年収データ(経理事務:平均371万円、経理:平均457万円)を基に、企業が実際に負担するコストを積み上げます。

給与・賞与

年収350万円の経理担当者を想定した場合の内訳です。

  • 月額給与: 約25万円(額面)
  • 賞与: 年2回で計2ヶ月分 = 約50万円
  • 年間給与総額: 350万円

年収450万円の経験者であれば月額約32万円、賞与込みで450万円となります。

社会保険料(企業負担分)

社会保険料は労使折半のため、企業側にも従業員とほぼ同額の負担が発生します。標準報酬月額25万円(年収350万円相当)の場合の企業負担は以下のとおりです(東京都・協会けんぽ 2026年度)。

保険種別料率(企業負担分)月額負担
健康保険4.955%12,388円
厚生年金9.15%22,875円
介護保険(40歳以上)0.80%2,000円
雇用保険0.90%2,250円
労災保険0.30%750円
合計約16.1%約40,263円

月額約4万円、年間で約48万円が社会保険料の企業負担として上乗せされます。年収450万円の場合は年間約62万円です。

参考: 社会保険料の会社負担で人件費が膨らむ!(経理ドリブン)

採用にかかるコスト

経理人材の確保にもコストがかかります。2026年の中途採用市場データを基にした目安です。

項目金額目安
求人広告費(dodaなど)30〜80万円
人材紹介手数料(年収の30〜35%)105〜158万円
面接工数(人事+部門責任者の時間)10〜20万円
入社後の教育・OJT(3ヶ月分の生産性低下)30〜50万円

人材紹介を使った場合、年収350万円の経理担当者でも採用費だけで105万円以上が発生します。この採用費を3年で按分すると、年間35万円です。

参考: 採用コスト1人当たりの平均相場 2026年(株式会社ONE)

間接コスト(設備・管理費)

見落とされがちですが、以下の間接コストも人件費に含めるべきです。

  • オフィススペース: デスク・椅子・什器で年間12〜24万円(按分)
  • PC・ソフトウェアライセンス: 年間10〜15万円
  • 通勤交通費: 年間12〜24万円(月額1〜2万円)
  • 福利厚生費: 年間5〜10万円

間接コストの合計は年間39〜73万円です。

年間総コストの積み上げ

コスト項目年収350万円年収450万円
給与・賞与350万円450万円
社会保険料(企業負担)48万円62万円
採用費按分(3年)35万円45万円
間接コスト50万円60万円
年間総コスト483万円617万円

額面年収350万円の経理担当者でも、企業が実際に負担するコストは年間約480万円。年収450万円の経験者なら年間約620万円に達します。額面年収の1.37〜1.38倍というのが実態です。

退職リスクを加味すると、さらにコストは上振れします。経理担当者が退職した場合、引き継ぎ期間(1〜3ヶ月)と再採用費用が追加で発生するためです。

BPO外注の費用構造を理解する

経理BPOの料金体系は、大きく3つのモデルに分かれます。

月額固定型

月額15〜50万円で経理業務を一括委託するモデルです。CASTER BIZ accounting(月額11万円〜)やRemoba経理(月額18万円〜)が代表的なサービスで、記帳・仕訳・月次決算まで幅広くカバーします。

  • 向いているケース: 経理業務をまるごと任せたい、担当者不在の企業
  • 月額目安: 15〜50万円(業務範囲による)

従量課金型

処理した件数に応じて課金されるモデルです。少量から始められ、繁忙期・閑散期の増減にも柔軟に対応できます。

  • 仕訳入力: 1仕訳あたり30円前後
  • 請求書データ入力: 1件あたり15〜50円
  • 入金消込: 1件あたり30〜50円
  • 月額基本料: 3万円程度(最低利用料金として設定されることが多い)

部分委託型

月次決算の一部(記帳代行のみ、給与計算のみ等)を切り出して委託するモデルです。月額5〜10万円で始められるため、初めてBPOを利用する企業の入口として選ばれています。

1仕訳あたり30円
従量課金型BPOの仕訳入力単価(月額基本料は別途3万円〜)
Dr.Wallet BPO 2026年4月時点の公開単価

損益分岐シミュレーション: 採用 vs BPO

ここからが本記事の核心です。経理担当者1名の年間総コスト(480万円)と、BPO外注費を件数別に比較します。BPOは従量課金型(月額基本料3万円 + 仕訳1件30円)を前提とします。

月間仕訳件数別のコスト比較表

月間仕訳件数BPO月額費用BPO年間費用正社員年間コスト年間差額(削減額)
100件33,000円39.6万円480万円440万円
300件39,000円46.8万円480万円433万円
500件45,000円54.0万円480万円426万円
1,000件60,000円72.0万円480万円408万円
2,000件90,000円108万円480万円372万円
3,000件120,000円144万円480万円336万円

月3,000件の仕訳を処理しても、BPOの年間費用は144万円。正社員1名の総コスト480万円と比較して、年間336万円のコスト削減になります。

経理担当者の処理上限から見た比較

経理担当者1名が1日に処理できる仕訳件数には限りがあります。一般的に、仕訳入力に専念した場合でも1日80〜120件、月間1,600〜2,400件が上限です(勘定科目の複雑さや確認作業を含む)。実際には仕訳入力以外の業務(支払処理、問い合わせ対応、月次決算資料の作成等)も担当するため、入力に充てられる時間は全体の40〜60%程度。つまり、月間640〜1,440件が現実的な処理量です。

この上限値をBPOの費用で計算すると、月1,440件でもBPO年間費用は約88万円。正社員の480万円に対して5分の1以下のコストです。

損益分岐点はどこか

正社員とBPOのコストが逆転するのは、月間仕訳件数が約12,500件に達した場合です。

計算: 480万円 = (3万円 + 0.003万円 x N件) x 12ヶ月 → N = 約12,500件/月

月12,500件の仕訳は、売上規模で数十億円クラスの企業に相当します。中小企業の大半は月500〜3,000件の範囲に収まるため、コスト面だけで見れば、ほとんどの中小企業でBPOの方が合理的という結論になります。

月12,500件
正社員1名の年間コストとBPO費用が逆転する損益分岐点
正社員年間480万円 vs BPO(月額基本料3万円+仕訳30円/件)で試算

仕訳以外の経理業務を含めたコスト比較

仕訳入力だけでなく、請求書処理や入金消込もBPOに委託した場合のシミュレーションです。月間処理量が「仕訳500件 + 請求書200件 + 入金消込100件」の中小企業を想定します。

複合委託のコスト計算

業務件数/月単価月額費用
仕訳入力500件30円15,000円
請求書データ入力200件25円5,000円
入金消込100件40円4,000円
月額基本料30,000円
月額合計54,000円
年間合計64.8万円

3つの業務を合わせても年間約65万円。経理担当者1名の年間コスト480万円の約7分の1です。

浮いた415万円で何ができるかを考えると、BPO導入の意思決定はよりクリアになります。管理会計の導入、ERPシステムへの投資、あるいはコア業務を担う上位職の採用など、企業の成長に直結する投資に振り向けられます。

コストだけで判断してはいけない5つの論点

損益分岐シミュレーションではBPOの優位性が明確ですが、コストだけで判断すると見落とす論点があります。

1. 業務知識の蓄積

社内に経理担当者がいれば、自社の業務プロセスに関する暗黙知が蓄積されます。取引先ごとの支払条件の癖、季節ごとの仕訳パターン、過去の税務調査で指摘された論点など、外部に委託すると社内に残りにくい知識があります。

対策としては、BPOと社内担当者の併用が有効です。入力・処理はBPOに任せ、社内にはチェック・判断を行う人材を配置する「ハイブリッド型」の運用が増えています。

2. レスポンス速度

社内担当者であれば「この請求書の勘定科目は何?」という質問にその場で回答できます。BPO事業者とのやり取りには数時間〜1営業日のタイムラグが生じるケースがあります。

ただし月次の定型業務であれば、事前にルールを整備しておくことでタイムラグの影響を最小化できます。

3. セキュリティとコンプライアンス

請求書データには取引先の情報、金額、振込先口座など機密性の高い情報が含まれます。BPO事業者を選定する際は、NDA締結の可否、物理的・論理的なセキュリティ体制、アクセスログの管理状況を必ず確認してください。

4. 退職リスクの考え方

社内担当者には退職リスクがあります。経理担当者が1名しかいない企業では、退職時に業務が完全に止まる可能性があります。BPOであれば組織的に業務を受託しているため、担当者の交代による影響は軽微です。

5. 繁閑差への対応

決算期や年末調整の時期に処理量が急増する企業では、BPOの従量課金モデルが有利に働きます。正社員は繁忙期に合わせて採用すると閑散期にコストが余り、閑散期に合わせると繁忙期に残業代が膨らむという構造的なミスマッチが起こります。

「採用 vs BPO」判断フローチャート

自社にとって採用とBPOのどちらが適しているか、以下のチェックリストで判断できます。

BPOが向いている企業:

  • 月間仕訳件数が3,000件以下
  • 経理が1〜2名体制で、担当者の退職リスクが経営課題
  • 繁閑差が大きく、月によって処理量が2倍以上変動する
  • 経理業務の大半が定型処理(仕訳入力、請求書処理、入金消込)
  • まずはコストを抑えて経理体制を整えたいスタートアップ

採用が向いている企業:

  • 月間仕訳件数が10,000件を超える
  • 管理会計・予算策定・資金繰りなど判断業務の比率が高い
  • 業界特有の会計処理(建設業会計、医療法人会計等)が多く、専門知識が必要
  • 経理部門を将来のCFO候補の育成ポジションとして位置づけている

併用が最適な企業:

  • 社内に経理担当者がいるが、入力業務で手一杯になっている
  • 月次決算の締めが遅延しており、経営判断に影響が出ている
  • 担当者に分析・企画業務を任せたいが、手が回っていない

多くの中小企業は「併用」の区分に当てはまります。入力をBPOに移管して社内の経理担当者の時間を開放する。これが最も投資対効果の高いパターンです。

経理BPO導入の具体的なステップ

BPO導入を検討する場合の実務フローを4段階で整理します。

Step 1: 現状のコスト可視化(1週間)

まず自社の経理業務にかかっている「本当のコスト」を把握します。この記事の第1章で示した項目(給与・社保・採用費・間接コスト)を積み上げ、年間総コストを算出してください。

同時に、月間の仕訳件数、請求書処理件数、入金消込件数を計測します。「何にどれだけの時間がかかっているか」を定量化することが、BPO導入の意思決定と効果測定の基盤になります。

Step 2: 委託範囲の切り出し(1〜2週間)

全ての経理業務をいきなり外注する必要はありません。以下の優先順位で、BPOに適した業務から切り出します。

  1. 仕訳入力: 処理量が多く、ルールが明確なため最も外注しやすい
  2. 請求書データ入力: フォーマットの多様さを人的リソースで吸収できる
  3. 入金消込: 名寄せルールを整備すれば外注可能
  4. 経費精算チェック: ルールベースの確認作業はBPO向き

詳しい業務別の外注判断基準は請求書入力代行の費用相場と失敗しない選び方でも解説しています。

Step 3: トライアル実施(2〜4週間)

100件程度の仕訳データでトライアルを実施します。評価ポイントは以下の3つです。

  • 精度: 勘定科目・税区分の正確性
  • 納期: 依頼から納品までのリードタイム
  • コミュニケーション: 不明点の確認フローがスムーズか

Step 4: 本稼働と効果測定(1ヶ月目〜)

トライアルで問題がなければ本稼働に移行します。月次で以下のKPIをモニタリングしてください。

  • BPO費用(実績 vs 予算)
  • 処理精度(修正率)
  • 社内担当者の工数変化(入力業務が減った時間で何に取り組めたか)

入金消込の外注化を検討している場合は、入金消込の基本と効率化ガイドも参考にしてください。

まとめ: 数値で判断する経理のコスト最適化

経理担当者1名の年間コストは、額面年収350万円でも社会保険料・採用費・間接コストを含めると約480万円に達します。一方、仕訳入力をBPOに外注した場合、月500件の処理で年間約54万円。コスト差は年間426万円です。

損益分岐点は月間約12,500件。この件数に達するのは年商数十億円以上の企業であり、大多数の中小企業にとってBPOはコスト面で合理的な選択肢です。

ただし、コスト削減は手段であって目的ではありません。BPOで浮いた時間とコストを、管理会計の高度化や経営判断の質の向上に投資すること。それが経理業務のコスト最適化がもたらす本質的な価値です。

よくある質問

経理担当者1名の年間コストはいくらですか?
給与だけでなく社会保険料(会社負担15〜16%)、賞与、交通費、福利厚生費、採用費の按分を含めると、年収350万円の担当者で年間480〜520万円、年収450万円の経験者で年間620〜700万円が目安です。
経理BPOの最低利用料金はどのくらいですか?
サービスにより異なりますが、月額3万〜5万円の最低利用料金を設定する事業者が多いです。当社(Dr.Wallet BPO)は月額基本料30,000円(税別)で、処理件数に応じた従量課金を加算する仕組みです。
BPO外注は何件から採用より安くなりますか?
仕訳入力の場合、月300件程度までであればBPOの方がコスト優位です。月500件でもBPO費用は年間約54万円で、正社員1名の総コスト(年間480万円〜)の9分の1程度に収まります。
経理BPOに向いていない業務はありますか?
経営判断を伴う業務(予算策定、資金繰り戦略、税務判断など)は社内に残すべきです。一方、仕訳入力・請求書処理・入金消込などの定型業務はBPOとの相性が良く、外注化による効果が大きい領域です。
BPOと社内経理を併用するケースはありますか?
むしろ併用が主流です。定型・大量の入力業務をBPOに任せ、社内の経理担当者は月次決算の分析や経営層への報告など、判断を伴う業務に集中する体制が多くの企業で採用されています。
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